国民負担増と議会動向=民間の失敗を国が救うことはできる。 国家の失敗も国家連合や超国家組織 (EUやIMF)
が肩代わりはできる。 が最終的には赤字国家は何らかの 「国民負担」 を求めざるを得ない。
問題は国民が負担を拒否すればどうなるか。 その対策として増税や公務員削減などを求める政府と納得できないとする議会審議に世界が一喜一憂するのはそのためだ
(ギリシャ、 米国など)。
■欧州でギリシャ危機=米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ (S&P) は10年4月27日、
ギリシャとポルトガルの長期債務格付けを引き下げた。 PIIGS (ポルトガル、
イタリア、 アイルランド、 ギリシャ、 スペインの頭文字) などで財政破綻不安が広がった。
■EU、 IMFと協調しギリシャに1100億ユーロの協調融資 (第1回) =ユーロ圏16カ国は10年5月、 ギリシャ救済策として2010〜12年の3年間で総額1100億ユーロの協調融資をIMFと共同で実行することで合意した。
■アイルランドでも=ギリシャ問題の半年後の10月21日、 アイルランドが国有化した大手銀行が、
事実上の債務不履行 (デフォルト) に陥った。 ア政府は11月21日、 EUとIMFに金融支援を要請。
EUは28日、 アイルランドに総額850億ユーロの金融支援を決定した。
■ 「欧州で次の危機も」 =IMF専務理事は昨年、 12月8日、 国連欧州本部で講演し 「欧州経済は問題を抱えており、
今までにないほど不確実だ」、 「危機管理体制の強化が遅れれば次の危機を招く」
と指摘した。
■ポルトガルでも=その半年後の11年3月、 格付け会社はポルトガルの長期信用格付けを2段階引き下げた。
■再びギリシャ危機=米格付け会社S&Pは11年5月、 ギリシャの長期債務格付けを 「債務不履行の可能性はより高い」
シングルB格とした。 ムーディーズも6月1日、 ギリシャの長期債務格付けを3段階引下げ
「Caa」 格とした。 「Caa」 格の国や企業の債券は5年間で約5割が債務不履行
(デフォルト) に陥っている。
■再びポルトガル=ムーディーズは7月5日、 ポルトガルの長期国債格付けを4段階の引き下げ、
投機的な水準である 「Ba2」 に改訂。 格付け会社でポルトガルを投機的水準に引き下げたのはムーディーズが初めて。
■ギリシャ不安再燃、 追加支援 (第2回) =ユーロ圏17カ国は7月21日、 ギリシャに総額1600億ユーロの第2次金融支援 (追加支援) で合意した。 同国への金融支援は10年5月に次ぎ2回目。 EUと国際通貨基金IMFによる公的支援は1090億ユーロ。 EU域内銀行はギリシャ国債に再投資する形で370億ユーロ負担する。
■ギリシャ国債、 さらに格下げ=ムーディーズは7月25日、 ギリシャ国債の格付けを下から2番目で 「デフォルトに陥っているか、
あるいはそれに近い状態にある」 と定義される 「Ca」 とした。 格下げの理由はEUの主要金融機関による支援策はギリシャ国債を保有する民間の投資家が多大な損失を被るため、
としている。
■ギリシャ国債、 デフォルトとの見解=欧米系の格付け会社フィッチは7月22日、 ギリシャへの第2次金融支援策ならギリシャ国債はデフォルトとみなすとの見解を示し、
ムーディーズも25日、 「発動されれば債務不履行 (デフォルト) とみなす」
と発表した。 ただEUは格付け会社によるデフォルト認定を織り込んだ対応策も講じている。
欧州中央銀行 (ECB) はデフォルトしてもギリシャ国債を担保に資金供給を続ける方針。
さらにEUは欧州金融安定基金 (EFSF) が銀行への資本注入の資金を融資することでも合意した。
■スペイン、 キプロスも=ムーディーズは7月29日、 スペインの政府債務格付けを引き下げ方向で見直すと発表。 ギリシャ第2次金融支援で民間債権者に負担を求めたことが 「支援の先例」 として国債保有リスクになり、「調達コストを高めている」 と指摘。また同社は27日、 キプロスの政府債務格付けを2段階引き下げた。 11日に起きた発電所事故や政治の不安定さが理由。
■米国債も格下げ=S&Pは8月5日、 米国債の長期格付けを最上位の 「トリプルA」 から、 「ダブルAプラス」
に1段階引き下げた。 米連邦政府の債務は法律上限額 (14.2兆j) を突破したが、
議会は上限額の引き上げに紛糾。 8月2日の期限切れ寸前で合意に達したが、 J&Pは妥協案は中途半端として格付けを引下げた。
解説:国債パラドックス
「深刻な債務問題を抱えているにも係わらず、 日米独の国債が買われ」 ている。 「市場が世界経済の減速懸念を強めているため」 だ (3日・日経)。 同様に 「深刻な国内問題を抱えているにも係わらず」 買われているのが円。 ユーロ安、 ドル安を嫌った 「投資家の安全志向」 が円高を呼び込んだ。 |